今日は土曜日。 長時間電車に揺られて、今私はある場所に立っている。 懐かしい・・・。 目を細めて辺りの景色を見渡した。 山と海、自然溢れるこの場所は所詮田舎だけど、ここは私達が生まれ育った場所だ。 私達5人はここでかけがえのない時間を過ごしたのだ。 ――銀八は此処にいる。 銀八と連絡が取れないという話を聞いた時、思い浮かんだのは此処だった。 晋介もそう思っただろう。 駅前でバスに乗り目的地まで向かう。 流れていく懐かしい風景を眺めながら思い出すのは、懐かしい日々の事。 くだらない事で言い合ったり、騒いだり。 そして、私達5人の運命を大きく変えた人との出会い。 ◇◆◇ バスから降りると、目の前には海。 季節外れのせいか、人は殆どいない。 そんな中、潮風に吹かれて揺れる銀色の髪が目に入ってきた。 ただ、真っ直ぐに海を見つめている姿に、いつかの彼の姿と被って見えた。 その彼の背中に向かって足を踏み出す。 20メートル、10メートルと徐々に縮まっていく距離。 手を伸ばせば銀八の背中へと届きそうな距離まで歩みを進めた時、不意に銀八は振り返った。 私の視線と銀八の視線が交わる。 どれほどの間、お互いに見つめ合っていたか分からないが、銀八は暫くして笑ってみせた。 その笑みを見た瞬間、泣きたくなった。 銀八がそんな顔して笑ったのを最後に見たのは、何時だっただろう? 昔は毎日の様に見ていた筈なのに・・・。 私に夢を与えたのは (そんな顔で笑う貴方だったのに・・・) →next |