保健室にある椅子へと促すと、その生徒は大人しく座った。

うつ向いているせいでその表情は分からないが、涙が頬を伝って制服や床へと落ちていく。

その様子に、思わず舌打ちしてしまいそうだった。

それは勿論、こんなにまで大ごとにしてしまった銀髪の天パに対してなのだが・・・。


なんとなく胸騒ぎがして名前の姿を探してみれば、この生徒が名前に掴み掛かっている場面に出くわした。

昔からそうだった。

名前に関する事には、いつも以上に俺の感は冴え渡る。

名前が風邪を引いた時、怪我をした時、落ち込んでいる時、





そして――名前が銀八に告白され、2人が付き合い始めた時も。





自分にとって最も最悪な日の事を思い出してしまい、今度は舌打ちを我慢する事が出来なかった。


「―・・・ねぇ、高杉先生」


俺の舌打ちにも脅えた様子も見せず、何処かぼんやりと遠くを見たまま例の生徒は口を開いた。


「私ね、・・・本当は全部分かってたの・・・」


止まっていた筈の涙がまた彼女の頬を濡らし始める。

その表情は最早少女ではなく、女そのものだった。



「―・・・ベッドで寝とけ


 今日はお前の貸し切りにしといてやる」


そのまま彼女をベッドの傍まで連れて行き、カーテンを閉めてやった。

暫くして聞こえてきた噛み殺す様な泣き声を合図に、俺は部屋を出て鍵をかけた。



数えきれない慟哭
(どいつもこいつも・・・馬鹿ばかりだ)



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