大学を自主休校という事にして、あるカフェで俺は約束した相手をひたすら待っていた。 もう既にコーヒーも冷めてしまい、口を付ける気にもなれない。 「失礼します」 「あぁ・・・」 カフェの店員が吸い殻が溜まった灰皿を変えに来た。これで2度目だ。 「・・・遅いんだよ、テメー」 「色々と忙しいもんでねぇ、アンタと違って」 そう言って、待ち合わせ相手だった総悟は向かいの席に腰を下ろした。 ――今日の用件は他でもない銀八と名字のその後について。 あの後、高杉と総悟を見送って俺は家に帰った。 だから俺はその後の事について何も知らないままだったのだ。 「あれから銀八は1度も学校に来てやせんぜ・・・」 「・・・っ、そう・・・か・・・」 総悟の頬には今もうっすらと殴られた後が残っていた。 ◇◆◇ 総悟のおかげで随分と財布が軽くなったのを感じながら、俺は先にカフェを出た。 予想以上の出費の代償に得た情報の7割が総悟の銀八への仕返しの話で、2割が銀八がいなくなったクラスの話。 そして、残りの1割が俺が知りたかった名字についての話だ。 『―・・・名字は、“いつも通り”変わりありやせんぜィ』 卒業してしまった事を恨めしく思う日が来るとは想像すらしていなかった。 高校生の頃なら見守るくらいは出来たというのに、今はそれすら出来ない。 切ない追憶 (思い出すのは愛しい人の横顔ばかりで) →next |