あの日から、もう既に一週間以上経ってしまった。

銀八はあの日以来、1度も学校には来ていない。


「名字、ちょっといいかい?」

「お登勢理事長・・・」


いつものように煙草を吹かしてはいるが、やっぱり様子が違う。


「あのバカに、いい加減にしないとクビだって伝えといてくれないかい・・・」


私に聞きたい事や言いたい事があるはずなのにそれだけを告げて、お登勢理事長は私に背中を向け廊下の奥へと消えていった。

何も事情を知らない先生達や生徒達には“銀八はインフルエンザでお休み”という事になっている。

職員室では“静かだなぁ”なんて口にする先生もいるが、その表情からは心配しているのが読み取れた。

また、銀八が受け持つ生徒達はいつも以上に落ち着きがなく、次第に教室の空気まで重苦しくなっていった。


銀八の携帯にメールを送っても返事は返ってこないし、電話を掛けてみても電源を切っているらしく繋がらない。


誰もいなくなった廊下の真ん中で佇んでいる時、


「・・・名字先生」


背後から恐る恐るかけられた声。


「・・・っ、貴方は」


私が銀八と別れたあの日、銀八と寝室で一緒にいた女子生徒だった。


「ねぇ、銀ちゃんを何処に隠したのっ?!何処に居るのっ?!」


私に掴みかかり、泣き叫ぶ生徒。

その生徒の顔色は青白く、目の下には隈がくっきりとあった。


「私の事、愛してるって・・・言ってくれたのっ!なのに・・・嫌だ!別れないからっ!!」

「落ち着いてっ!」

「・・・さない、許さないからっ!!」



「・・・・・・っ!」



暗い感情、喰う慕情
(そこまで必死になれるほど、私は彼を愛していた?)



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