美術準備室のドアの前で俺はただ立ちすくむ。 名字や銀八の事が気になって、怪我してる総悟を手当てした後、総悟を山崎に任せて俺はこの場に戻ってきた。 けれど、聞こえてきた名字の話を、ドアの前でただ聞いていただけだった。 (何やってんだ・・・俺は・・・) 俺はこのドアを開けて中に入る事も、また名字の話を聞かなかった事にして保健室に戻る事も出来なかった。 ――ガラガラ と、目の前のドアが開き、中から高杉だけが出てきた。 ドアが開いた時に、抱き合う名字と銀八の姿が目に入った。 そこには教師としての姿なんかこれっぽっちもなく、ただの男とただの女の姿。 どんなに俺が望んでも、俺の前では、一度も見せてはくれなかった姿だった。 「・・・行くぞ。後は2人の問題だからなぁ」 「あぁ、分かってる」 悔しくて、悔しくて、仕方ない。 卒業したら、教師と生徒という壁なんか無くなると思っていた。 けれど、実際はそんな事なくて、今もなお大きな壁として俺の前に立ち塞がる。 名字の告白は、正直ショックだった。 どんなに名字が銀八の事を想っていたのか・・・それを突き付けられたようで、2人の絆を実感させられた。 だからといって、名字の事を諦めるなんて出来ない。 俺の想いもそんなに軽いもんじゃない。 想いのデカさなんて比べられるもんじゃないが、銀八にだって敗ける気がしない。 それだけは、胸を張って言える。 喉の奥から絞りだした (例えそれが、俺の強がりだとしても) →next |