銀八の浮気に初めて気付いたのは、1年程前の事だった。 朝方酔い潰れて帰ってきた銀八の首筋に残された1つのキスマークと、彼の髪から香るいつもと違うシャンプーの香り。 それに気付いた時、まるで鈍器で頭を殴られたよう衝撃が私を襲った。 同時に、私はどうしたらいいのか分からなかった。 銀八の気持ちを私に繋ぎ止めるには、怒ればいいのか、泣けばいいのか、それとも他に何かいい方法があるのか・・・。 結局、浮気をされた事より銀八を失う事の方が怖くて、私は気付かなかったことにしたのだ。 物心がつくかつかないかという頃から隣には銀八がいて、隣にいるのが当たり前になっていた。 私にしたら、銀八を失う事は世界を失うに等しい事だったのだ。 それに、銀八の好みのタイプが私とは正反対のタイプだとイヤというほど知っていた。 実際に銀八が付き合ってきた女の子達は、皆可愛くて・・・守ってあげたくなるような女の子ばかりだったからだ。 「私はいつも心のどこかで"いつか銀八に捨てられるんじゃないか"って・・・、そう思ってた」 だからこそ、私じゃ浮気されても仕方ないって思ったし、ちゃんと私の所に戻ってきてくれるならそれでも構わないと、だから平気だと自分に言い聞かせた。 「本当は銀八に他の女に触れて欲しくなかったし、嫉妬でおかしくなりそうだったくせに・・・ね」 銀八を抱き締めたまま自嘲した。 銀八はギュッと私を抱き締める手に力を入れて、首を横に振る。銀八も晋助も黙ったまま私の話を聞き続けていた。 「それからは、銀八に裏切られたショックと銀八を失うという恐怖でまともに銀八を見る事さえ出来なくなってしまった」 そして、そんな私の行動はさらに2人の距離を遠くしただけで、浮気現場を目の当たりにするという最悪な事態を引き起こしただけだった。 晒す日々の惨 (ただ目を瞑り、耳を塞ぎ、嘆くだけの私) →next |