昼休みもとっくに終わり、静まり返った廊下からバタバタと誰が走ってくる音が聞こえくる。


「私より沖田君をっ!」

「分かってる。オイ、総悟?」


他の誰かにこんな姿を見せるワケにはいかない。

私は露になっている胸元を隠すようにギュッと握りしめた。

土方君に殴られた銀八は、黙ってうつ向きじっと座り込んだまま動かない。


「う゛・・・」

「沖田君!」

「総悟っ」


本気で蹴り上げやがって、沖田君はお腹を押さえながら悔しそうに呟く。


――ガラガラッ


と再びドアが開く音がして振り返ってみると、そこには晋助の姿があった。

彼もここまで全力で走ってきたのか、息が荒い。

晋助は私の姿を見た瞬間眉を潜めた。


「晋助、沖田君が・・・」

「あぁ・・・」


晋助は着ていた白衣を脱いで私の肩にかける。

そこで初めて、私は私の体が震えている事に気が付いた。


「オイ、山崎」

「ハ、ハイッ!」


沖田君の様子を見た晋助は(いつからいたのか知らないけれど)廊下にいた山崎君を呼び、彼を保健室に連れて行くように指示を出した。


「とりあえず、保健室で応急処置でもしてろ。念のため後で病院に連れて行ってやる」

「晋助、どうして・・・」

「山崎から聞いて・・・な」


山崎君?どうして彼が?私が疑問に思っていると、山崎君に肩を借りている沖田君が、


「銀八の姿が見えた時、とっ嗟にリダイヤルを押したんでィ」

「・・・それが俺に繋がって、山崎に高杉に連絡するように伝えた」

「そう、だったんだ」


その後、沖田君は山崎君と土方君に連れられて保健室へと向かった。


「・・・で、テメェはいつまでそうしているつもりだ」


この部屋に残されたのは、私と晋助、そして銀八だけとなった。



散らかった部屋の片隅で
(うつ向いたままの彼が、とても小さく見えた)



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