「何で」とか「どうして」なんて言葉が出る事はなくて、ただ呆然と銀八をみつめる事しか出来なかった。


「なぁ、総一郎君。俺にも話してくれるよなぁ?」


この声、銀八は本気で怒っている・・・。

相変わらず死んだ魚の様な目をしてるけど、私には分かった。

いつもより僅かに声が低くなっている。

しかし、沖田君は動じる事なくニヤリと挑発的な笑みを浮かべるだけだった。

銀八もそれに応じるかのようにニヤリと笑った後、沖田君の胸倉を掴み上げる。


「止めて下さい、坂田先生!」


沖田君を掴み上げている腕を下ろそうとするが、女である私の力ではびくともしない。


「前から思ってたんだけどさぁ、生徒の前だからって"坂田先生"じゃなくてもよくね?俺と名前の事なんて、皆知ってんだしよぉ」

「・・・何・・・言って・・・」


そんなの別れた今はもう関係無いでしょ?混乱する頭の中で必死に銀八の言葉が意図する事を考えた。

けれど、やっぱり「どうして?」と疑問符ばかりが浮かんでくる。


「フッ・・・、みっ、ともない・・・ですぜィ」


胸倉を掴まれているせいか、沖田君は顔を歪めたまま苦しそうにしている。


「・・・総一郎君はさぁ、聞かれた事だけ話せばいいんだっつーの」

「ウグッ・・・」

「坂田先生っ!」


銀八がさっき以上に掴み上げる手に力を入れたせいで、沖田君はさらに苦しそうな表情になった。

いくら私が「沖田君は関係ない」と言っても納得がいかないのか、銀八は一向に手を緩めるようとはしない。


「そ、んな・・・に知りたいん・・・なら、教えてやりま・・・さァ」


沖田君のその言葉で、ようやく銀八は手を離した。

ゴホゴホと咳き込みながら床に座り込んだ沖田君に駆け寄ろうとしたけれど、銀八に手首を掴まれたせいで、それは叶わない。


「アンタが・・・準備室で生徒とヤッてる所に、名字先生を連れて行ってやったんでさァ」



サイレンは鳴り止まない
(グッと握られた手首が悲鳴を上げた)



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