結局俺は名字に何も言えず、自分の教室へと戻ってきてしまった。 とりあえずやつあたりも兼ねて山崎の机を蹴っ飛ばしてから、自分の机に突っ伏した。 『・・・別に沖田君が気にする事じゃないわ』 その言葉が俺の頭の中で何度も繰り返される。 (・・・なんでそんな事が言えるんでィ) 廊下を歩いている時にたまたま聞こえた噂。 本当かどうか確かめずにはいられなかった。 急いで美術室に行ってみたら、タイミングよく中から名字が出てきた。 ――名字の左手の薬指には指輪がない。 名字も心なしか元気がない。 あの天パはどうでもいいが、名字を傷つけたかったワケじゃない。 でも、2人には別れてもらわなけばならなかった。 「おーい、お前ら席に座れ。授業始めんぞぉー」 ペタペタとサンダルの音と共に教室へと入ってくる、見るからにやる気のない担任。 まぁ、この男の場合はその辺にいるバカな女と学校で盛っていたのが原因なのだから自業自得だ。 「・・・・?!」 銀八の左手の薬指には、いつもと同じように指輪がはめられている。 「オイオイ、総一郎君。いくら先生がカッコイイからって、んなに見つめんなー」 「総悟でさァ」 この男は、俺が名字を強引に銀八の浮気現場まで連れて行った事を知ったら、どんな顔をするだろう? サディストの定義 (指輪だけじゃなく思い出すら粉々に壊してやりまさァ) →next |