いくつかのグループに分かれて、机の上に置かれた林檎をデッサンしている生徒達。

私が担当している教科は美術で、美術部の顧問もしている。

生徒達のデッサンを見て回り、アドバイスをする。

いつもなら静かなこの授業も、今日は少し空気がざわついている。

おそらく、いつもはめていた私の左手の薬指に指輪がないことに、気が付いたのだろう。

女の子はそういう事に目敏い。


――キーンコーン カンコーン



「はい、今日はここまで」


デッサンを提出する際に、やはり数人の女の子の視線が私の左手にチラッと向けられる。


(興味津々な年頃・・・ってね)


しかし、直球で聞かれないだけまだマシかもしれない。


「・・・晋助のトコで一服してこよ」


生徒達のデッサンを片付けて美術室を出る。


「・・・・・・・・・・」

「・・・何か用かしら、沖田君」


鍵を閉めようとした私の背後に佇む人の気配。

声をかけてみたが、返事はなかった。


――沖田総悟。


銀八が担任を務める3−Zの生徒であり、私が銀八と別れる事を決心するきっかけを作った人物でもある。


「・・・別に沖田君が気にする事じゃないわ」


背中越しにそう告げて、晋助がいる保健室へと向かった。

沖田君の戸惑っているような視線を感じたまま・・・。



運命には逆らえない
(君の行動は必然だった。私はそう思うよ)



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