機転はあまりききません


長い長い入院生活を終え、私はようやく退院出来ることとなった。

勿論退院出来るのは喜ばしい事なのだがそれはまた、新たな悩みの種となったのだ。


(・・・なんなんだ、これは・・・)


退院の日、病院を出た私を待っていたのは豪華な運転手付きの車(外車だと思われる)と執事の篠山さん(29)。

ポカーンと惚けている私をその車に載せ、我に返った時には大きなお屋敷の前だった。

日本にこんなお屋敷があったんだ・・・。

なんてそんな事を思っていたら、篠山さんの口から信じられない一言が発せられた。


「お帰りなさいませ、名前様」



「・・・・・・・・・は?」



今、この人は何ておっしゃいました?

だって私の実家は一般的な大きさの家だったし、こんな無駄に大きな門なんて付いてなかった。

一応、表面上は普通にしていたつもりだが、頭の中ではいくつも『あり得ない』という言葉が飛び交っていた。

冷や汗かきまくりな私を再びエスコートする篠山さんに連れられてそのお屋敷に入れば、大勢の人が私を出迎えた。


「「「お帰りなさいませ名前お嬢様」」」


そう声を揃え一礼する人達に、


「た、ただいま?」


と、ぎこちなく笑って一礼を返す事しか出来なかった。

中身は2X歳のハズの私だが、とっ嗟に反応出来ただけでも良しとしてもらいたい。



→next

- 7/12 -

[*前] | [次#]
しおりを挟む


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -