初めて彼女に会った時の事を俺は今でもはっきりと覚えとる。 以前から親父が友人の娘が入院してるっちゅう話は聞いとった。オカンもその子の事を知ってるらしく、2人で難しい顔をして話してんのを、何度も見かけた。 そんなある日その子が目覚めたらしく、念のために親父が一晩ついている事になったらしい。 そして、たまたま家にいた俺はオカンから親父の着替えやその子へのお見舞いの品を病院まで届ける事になった。 いつもなら荷物を渡してさっさと帰るのに、その日は親父に彼女を見舞ってくるように言われ、仕方なく彼女の病室へと足を運んだ。 (名字名前っと・・・ここか) 早速彼女のネームプレートがある病室をノックしてみたが、返事がない。仕方なく声をかけながらドアを開いた。 「失礼し・・ま・・・・」 その言葉を最後まで言うことが出来へんかった。 ――ベッドで眠る彼女に見惚れてしまったからや。 透き通るような白い肌、長い睫毛、そして病室の窓から入ってくる風で彼女の綺麗な栗色の髪が微かに揺れとった。 音をたてないようにドアを閉め、一歩ずつゆっくりと眠る彼女に近づいていった。 彼女が起きてまうんちゃうかと思うくらい、自分の心臓の音が聞こえてくる。 彼女の瞳はどんな色なんやろ? 彼女はどんな声で話すんやろ? その日以来、俺は時間があるとお見舞いと称して彼女に会うために病院へと足を運んだのだった。 →next |