山の天気は変わりやすい。 なんてよく言われるけど、その言葉の通り、昼食を食べ終えた頃にさっきまで晴れ渡っていた空が嘘のように雨が降り出した。 雨が当たらない場所へと皆が避難し、不安そうに雨雲を見上げていた。 「―…雨、止むのかよぃ?」 「この降り方だと止んだとしても、予定通りとはいかないかもしれない」 「そっか…」 なんとなく呟いた俺の言葉に、柳が律義に返事を返してくれた。 俺の視線は雨雲に向けられてるけど、意識は全然別の所にいってる。 そう、俺の隣にいる――名字名前に。 さっきの事もあって仁王から名字さ…名前ちゃん…の隣を死守したのはいいけれど、憧れの彼女が隣にいるという事だけで、俺の心臓は今にも爆発してしまうんじゃないかというくらい高鳴りっぱなし。 んでもって、さっきから気になる事が1つ。 名前ちゃ、名前ちゃんが寒そうに腕を摩っている。太陽が照っている時は気になんなかったけど、雨が降り始めたせいで気温が下がったんだ。 俺でさえ少し肌寒く感じるんだから、ゴホンッ、名前ちゃんなら尚更なんだろう。 こんな時こそ、男気を見せるチャンスだろぃ?! さりげなく俺のジャージを名前ちゃんの肩に掛けてあげる。…これは単に、名前ちゃんの体調が心配だからで、決して下心があるわけじゃ…。 この数分の間に何度も頭ん中でシュミレーションしてみたものの、俺の体は全く動いてはくれない。 あぁ、なんか手が緊張で汗ばんできたし…。 (1、2の3、でいくぜぃっ!!) 心ん中で何度目かの気合いを入れて、俺は口を開いた。 「―…あっ、あの「名字、これを着ているといい」……………」 緊張して裏返った俺の声に真田の声が被る。 「えっ、大丈夫だよ。真田君が風邪引いちゃうよ」 「心配いらん。俺はこの程度で風邪など引かん」 「……………」 なんでだよぃっ!! なんなんだよぃっ!! 俺が意を決してしようと思っていた事を、あっさりとあの真田がやってのけてしまった。 ジャージを脱ごうとした俺の手は行き場を失う。 ガックリと肩を落とし真田を睨み付けた俺の視界に、笑いを必死に我慢するメンバー達の姿が入った。 →next 密かに心の中だけで“名前ちゃん”と呼んでいるが、緊張&照れで噛みまくりなブン太。 |