百聞は一見にしかず


全員が無事にゴールしたので、ようやく昼食となった。

グループごとにカレー作り。

私のグループにいる女子は私一人なので、主に私が作る事になるだろう。

そう思って用意されていた食材と包丁を持った時だった。


「・・・名字さんは料理の経験はあるの?」

「えっ?」


若干不安そうな顔をしているメンバーが私を見ていた。


「いや、名字は・・・家で・・・」


そう言葉を濁す柳君。


(あぁ、そういう事か・・・)


こっちでの私はいわゆる“お嬢様”。故に料理などした事がないと思われているんだろう。

確かにこっちでは家事などはやらせてもらえないが、あっちではごく普通の一般的な家で、両親は共働きだったのもあり家事は普通に出来る。


「大丈夫だよ」


彼等の表情や言動を不快に思っていないという意味も含めてそう笑ってみせたけど、彼等の表情が晴れる事はなかった。

百聞は一見にしかず。

言ってみたところで信じてもらえない以上、実際に見てもらうしかない。

彼等の視線を感じながら、私は包丁を動かし始めた。




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