登山を始めて暫くすれば、登る距離に個人差が出てきます。 前にいるのは、比較的男性が多くなってしまうものです。 そして、その中でも最前列にいるのは私達テニス部のメンバーです。 当然と言えば、当然でしょう。 遅れを取ったりすれば、幸…ゴホンッ、いいえ、日頃の厳しい練習に比べればこの程度の登山等軽いものです。 しかし、これは一体どういう事なのでしょうか? ひたすら無言で歩みを進める真田君はまだいいのですが、問題は丸井君です。 前にいる真田君の背中を睨み付けながら、あの丸井君までもが無言で歩いています。 「・・・ったく、ブン太の奴」 丸井君がこうなった原因を知っているのか、桑原君が呆れたように呟いた。 「っ、煩せぇよ!」 その呟きが聞こえていたらしく、丸井君は振り返って桑原君を睨み付けます。 そして、何かを思い出したのか表情を歪めてまた真田君を睨み付ける。 「・・・なるほどな、そういう事か」 柳君は軽く頷きながら、ノートを取り出した。 丸井君は怒りながらも早足で真田君を追い抜かしたのですが、今度はそんな丸井君を真田君が追い抜かしました。 そんな事を何度も繰り返す2人。 「全く、あの2人は何をしてるんだろうね」 呆れた様に幸村君が呟きました。しかし、幸村君はそんな2人を面白がっている様にも見受けられます。 「・・・仁王君、貴方もですか」 ふと横を見れば、僅かに口角を上げて前の二人を見つめる仁王君の姿。 「退屈せんですみそうじゃ」 どうやら、私もジャッカル君同様に苦労しそうな予感がします。 →next バスでのヒロインと真田を目撃して、嫉妬するブン太。 |