バスを降りて、うーんと思いっきり伸びをする。肺一杯に新鮮な空気を吸い込みながら、辺りの景色を見渡した。 緑が多くて、空気が冷たい。 あぁ、空気が新鮮でおいしいなぁ、なんてオバサン臭い事を思ってしまった。 「名字、行くぞ」 「あ、うん」 真田君は私の方を見る事なくスタスタと歩き始める。 ―そんな彼の耳は赤く染まっていた。 目的地に着いた時、いつの間にか寝てしまっていた私は真田君に起こされたのだが、その時から、真田君の様子がちょっとおかしい。 (…もしかして、寝言で変な事言っちゃった?) いやいやそれは無いハズ…。と一瞬浮かんだ考えを否定し、真田君の後を小走りで追いかけた。 ◇◆◇ とある広場に1年生が全員集まって、校長先生の話を聞いき始める。 心構えや注意事項等、出発前に聞いた話をまた改めて話していた。 今から目的地まで登山、というかハイキング。 しかし、私一人先生と一緒にお留守番だ。 私は生徒に付き添わない先生達と一緒に、先に車で目的地まで移動する事になっている。 校長先生の「解散」の一言で、クラス順に動き始めた。 取り合えず、自分のペースを守って目的地であるキャンプ場に無事着けばいいらしい。 頑張ってね、とクラスメート達を見送り、神谷先生と共に車が待つ場所へと移動した。 「・・・私、何かしちゃったのかな?」 真田君はやっぱり私の顔を一度も見る事なく、行ってしまった。 小さくなっていくクラスメート達の背中を見ながら、私はそんな事をポツリと呟いた。 →next |