真新しいジャージに身を包み、五月晴れの空の下1台のバスの前でクラスメートに声をかけた。 「おはよう」 「あ、名字さん、おはよう」 「おはよう」 「いい天気でよかったよね」なんて、クラスメートと他愛無い会話が出来る様になりました。 バスに乗り込んめば、自然と目を引く人物の姿があった。 「真田君、おはよう」 「あぁ、おはよう」 黒い帽子を被り、真っ直ぐ背筋を伸ばして座っていた真田君は、私に窓側の席を譲るべく立ち上がった。 先生から私の事を頼まれたせいか、人一倍責任感が強い真田君はあの日以来いつも私の傍にいて、何かと手伝ってくれている。 こうしてバスで隣に座ってくれる事も、彼は当然だとでもいうように決めてしまった。 私としては有難いって思うし、嬉しいとも思う。 けれど、真田君だって友達と一緒がよかったんじゃないか・・・とも思う。 ◇◆◇ 「全員、揃ったな?出発するぞー!」 「「「ハーイ」」」 神谷先生の声に、クラスメート達は手を上げて答えた。 (えっ、高校生ってこんなノリだったっけ?) 隣に座る真田君は手を上げたりしなかったけれど、声の感じから大半の生徒がノリ良く答えた事に驚いてしまった。 私が思うほど、高校生って取っ付きにくくないんだ・・・。 ウンウンと一人納得して頷く私を、真田君は不思議そうに見ていた。 「・・・・・?」 「あっ、えーっと・・・楽しみだね」 「?、あぁ」 前に視線を戻した真田君に気付かれないよう、小さく息を吐いた。 →next |