俺はヘタレじゃねぇっ!


何やっちゃってんだーっ、俺っ!!


騒がしかった体育館が一気に静まり返ってしまったのは、俺の気のせいじゃないと思う。

体中に冷や汗が流れ、顔が熱くなっていく。

見なくたって、今自分の顔が恥ずかしさで真っ赤に染まっているのが分かる。


「・・・・ぷっ」


その声に自分の周りを見てみれば、メンバー達が声を殺して笑っている。


「―・・・っ、笑いたきゃ笑えよっ!!」


肩を震わせて笑うのを我慢しているメンバーに腹が立って、俺はそう叫んだ。


「・・・ハハハッ、“ちゅ”って何だよ、“ちゅ”って!」

「そ、そんなに笑うなんて・・・っ、し、失礼・・・です、よ」

「ククッ、ブンちゃんは可愛いのぉ」

「フフフッ・・・ごめんよ、ブン太」


メンバーだけでなく、周りにいた奴等にまで笑い始めやがった。

そんな時、急に“天使”の事を思い出して、ハッと見て見れば、俺から視線を逸らせる真田の隣でキョトンとした表情の“天使”と目が合った。

怒りで忘れていた恥ずかしさが、また込み上げてきてしまった。


(な、何で噛んだりしたんだよっ!俺って、こんなキャラじゃねぇハズだろぃっ!!)


そうだ、こんなヘタレでベタなキャラは赤也の専売特許だったハズなのに・・・。

あまりにも情けなくて落ち込んでしまった俺。


「丸井君?」


そんな俺に透き通る様な声色で声を掛けてきた人。


「―・・・また、会えたね」


そう言って彼女が俺に微笑んでくれたから、情けなさとか恥ずかしさとかが全部どっかに吹っ飛んでしまった。

“あの時はありがとう”とか“俺も会いたいと思ってた”とか・・・色々言いたい事があったけど、それまでどっかに吹っ飛んでちゃった俺は、差し出された小さくて綺麗な手を握り返してコクコクと頷くだけで精一杯だった。



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