入学式を終えた次の日、HRが始まる前に担任の神谷先生に呼ばれた。 先生は少し渋るような表情を見せた後、口を開いた。 「今日、名字の事情をクラスの奴らに話しておこうと思うんだが・・・」 「ええ、構いません」 今日のHRではオリエンテーリングについての話をする事になっている。 新しいクラスに馴染むように、一泊二日で近場に泊まるらしい。なんでも山に登りキャンプをするそうだ。 「で、どうだった?」 「主治医の先生から許可は頂きました。もしもの時に備えて病院の方も手配して下さるそうです」 残念ながら、私は山登りには参加出来ない。 けれど、無理はしないという約束でキャンプ(泊まるのはコテージだけど)には参加出来る事となった。 その時に色々と言われるくらいなら、今ちゃんと説明してもらった方がいいに決まってる。 私は先生に宜しくお願いしますと頭を下げてから、自分の席へと戻った。 (それにしても・・・) さっきからチラチラと視線を感じるけど、まだ誰とも話をしていない。 もうすぐHRが始まるというのに、隣の席も前の席も空いたまま。 「名字」 「真田君、おはよう」 真田君もおはようと挨拶してくれた瞬間、教室がざわめき出した。 え?何?今普通に挨拶しただけよね!?どっかおかしかった? 「後で名字に紹介しておきたい人がいるのだが、構わないだろうか?」 「う、うん。それは全然構わないんだけど・・・」 「そうか」 微妙な空気のが教室に漂っているというのに、真田君は全く動揺もしてないようで、私が了承の返事をすると少し嬉しそうな表情をみせた。 すると、さっき以上にざわめき出し、皆びっくりというか妙な顔でこっちを見ている。 誰かどういう事か説明して下さいっ!! 結局、何が何だか分からないままHRが始まってしまった。 →next |