太陽も沈み始めた頃、携帯が鳴り出した。 ディスプレイに表示された名前を見て、思わず頬が揺るんでしまう。 『もしもし、篠山さん?』 それは名前様からで、予想通り迎えに来てほしいという内容の電話だった。 必ず電話するようにと名前様に口煩く言ったのは私自身だというのに、遠慮がちな名前様の声色に苦笑してしまう。 心配し過ぎなのは自覚しているが、こればかりは仕方ない。 この家の者の誰しもが、まだ名前様が事故にあった時の事を引きずっているのだから。 そんな私達の心情を察していらっしゃる名前様は、いつも苦笑しながらも私達の言う事を受け入れて下さる。 こんな事がいつまでも続くとは、勿論思っていない。 それでも・・・、 (もう少し、私達の我が侭に付き合って下さいね) 名前様との電話を終え、運転手を呼びに部屋を出る。 そういえば・・・今日は忍足先生の息子さんと会ってらっしゃるんでしたね。 名前様を迎えに行く車中で、息子さんにどう釘を刺しておこうかと考えていた。 →next |