今、俺の目の前にはミルクティーを飲みながら、一生懸命話をする名前ちゃん。 ずっと名前ちゃんを見つめていたせいか、ふと名前ちゃんは首を傾げる。 そんな彼女にニッコリ微笑むと、彼女もニッコリと微笑み返してくれた。 (・・・あかん、名前ちゃんのバックに花が見える) 名前ちゃんと約束を取り付けた日から、病院から近いカフェを調べ上げて、名前ちゃんが好きそうな店をピックアップし、事前に店まで下見にも来た。 名前ちゃんの笑顔と制服姿が見れるなら、こんなん苦労でもなんでもない。 (って、今日の目的はそれだけちゃうやんか、俺!) 名前ちゃんが話終わるタイミングを見計らって、俺は話を切り出した。 「・・・で、今日はどうやった?友達出来たん?」 「友達?」 「せや。どんな子と仲良くなったんかなぁと思って・・・」 名前ちゃんに変な虫が付いてないか聞き出すんが、今日の真の目的や。 こんな綺麗な子やったら、絶対男は放っとかへん。 そう思って聞いてみたけど、名前ちゃんの表情が少しだけ曇る。 「えっとね。・・・クラスの子とあんまり話出来なかったんだ」 「なんでなん?」 「学校行くの久々すぎて、どんな話をしたらいいか分からなくて・・・」 俺のドアホーッ!! なんて無神経な事聞いてもうてんっ! 考えていた事が表情に出てしまったのか、名前ちゃんは慌てて言葉を続ける。 「あっ、でもね、一人だけたくさん話した人がいるの」 「そっか・・・よかったなぁ。どんな子なん?」 「優しくて、可愛い人だった」 その言葉にホッとした。 まぁ、悪い虫が付いたとしても俺が追い払えばええし、名前ちゃん程綺麗やったら、逆に臆して話しかけにくいんかもしれへん。 その時の俺は、名前ちゃんが言った"可愛い"の意味が、"頬を赤く染めながらも、一生懸命話してくれた真田の姿が可愛い"という事だと知るよしもなかった。 →next |