見送る姿に…


いつものメンバーと共に、入学式が終わり次第もう一度テニス部に顔を出す予定だった俺は、精市のクラスを訪れた。

精市は教室の窓から校庭を見ているようだ。

しかし、ただ外を見ているにしては精市の表情が気になった。――薄っすらと笑みを浮かべている。


「やあ、柳」

「他はまだ来ていないようだな」


俺が疑問に思ったのを悟ったのか、精市は俺に手招きをした。

俺が精市に近づいてみれば、


「珍しい光景だと思わない?」

「・・・確かにな」


精市の視線の先を追えば、そこにいたのは弦一郎と・・・一人の女子だった。

残念なことに、ここからでは女子生徒の顔は確認出来ないが、弦一郎の空気がいつもより柔らかくなっているのが分かる。


(それにしても・・・)


俺達でなくても、あの弦一郎が女子生徒と2人で話をしているのが珍しいと思ってしまうのか、他の生徒達も遠巻きに2人を観察している。(本人達は全く気づいていないようだが・・・)

ガラガラと教室のドアが開き、柳生とジャッカルが入ってきた。

2人と軽く挨拶を交わし、新しいクラスや担任について話し始めた。

ジャッカルはブン太と同じクラスになったことで、若干気落ちしているようだ。

会話の最中、もう一度校庭へと視線を戻した時見えたのは、彼女を見送っているであろう弦一郎の姿だった。



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