思いがけない頼み事


入学式当日。

俺は幸村、蓮二と共に早めに学校へと来て、挨拶も兼ねてテニス部を訪れていた。

見学をしていると、途中で俺だけが監督に呼ばれた。


「真田、お前は俺のクラスなんだがな・・・」

「はい。それで・・・」

「ちょっと気にかけてやってほしい女子生徒がいるんだ」

「・・・女子生徒ですか」

「あのな・・・」


女子生徒と聞いた瞬間、眉間に皺が寄ったのが自分でも分かった。全員がそうだとは言わないが、どうしても部活中に煩く騒ぐ様子をイメージしてしまったからだ。

監督にもそれが分かってしまったらしく、苦笑いだった。


「まぁ、いろいろと事情があって・・・な」

「事情・・・ですか?」

「あぁ、・・・真田なら大丈夫か」


神妙な顔で監督は話し始めた。

その女子生徒の名前は名字名前といい、高校からこの立海大附属に入ってくるという。

只、外部生というだけなら断るつもりでいた。しかし、それだけではなかったのだ。

その彼女は小学校6年生の時に交通事故にあい、受かっていた立海大の中等部にも通えず、ずっと意識不明の状態だったそうだ。

それが奇跡的に意識を取り戻し、この春からこの高校に通う事になった。

しかし、一つ問題があった。

長い間寝たきりだった彼女の体力は無きに等しい状態で、リハビリしたとはいえ学校で過ごすにはまだ万全ではないそうだ。


「常に気にかけろと言ってるわけじゃない。只、彼女が困っている時に、出来る範囲で手を貸してやってほしい」

「分かりました」


事情を知った今、俺が断る理由など何も無かった。



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