他の生徒達が次々と教室を出ていく中、私はまだ席に座っていた。 勿論、理由があって残っているのだ。 (一度に全部は運べない・・・どうしようか) 全部一気に運べるかどうか試してみたが、筋肉が落ちている私の腕では少しの間しか持ち上がらなかった。 (時間がかかるし面倒だけど、何回かに分けて運ぶしかないか) ここに篠山さんがいれば頼むところだが、部外者が校内に入れるはずもなく、教科書が大量に入っている袋から教科書を取り出そうとした時、 「おい、名字。ちょっと来い」 と担任の先生に呼ばれてしまった。 えっ、私何かした?と若干焦りながら先生の元に行けば、そこには男子生徒が一人。 「名字、こいつは真田弦一郎。悪いと思ったが、こいつにお前の状態を話してある。力になってもらえ」 「えっ?」 「まぁ、こいつは愛想がないが面倒見はいいし、体力も十分にある。荷物持ちにはもってこいだ。 ――無理せずに、出来る範囲で頑張れよ」 そんなに気にかけてもらっていたなんて、予想外の出来事に驚き戸惑っている私に、 「真田弦一郎だ。宜しく頼む」 「あ、名字名前です。こちらこそ、宜しくお願いします」 高校一年生とは思えない程落ち着いた物腰の彼に、お辞儀と共に挨拶をした。 →next |