嬉しい気遣い


他の生徒達が次々と教室を出ていく中、私はまだ席に座っていた。

勿論、理由があって残っているのだ。


(一度に全部は運べない・・・どうしようか)


全部一気に運べるかどうか試してみたが、筋肉が落ちている私の腕では少しの間しか持ち上がらなかった。


(時間がかかるし面倒だけど、何回かに分けて運ぶしかないか)


ここに篠山さんがいれば頼むところだが、部外者が校内に入れるはずもなく、教科書が大量に入っている袋から教科書を取り出そうとした時、


「おい、名字。ちょっと来い」


と担任の先生に呼ばれてしまった。

えっ、私何かした?と若干焦りながら先生の元に行けば、そこには男子生徒が一人。


「名字、こいつは真田弦一郎。悪いと思ったが、こいつにお前の状態を話してある。力になってもらえ」

「えっ?」

「まぁ、こいつは愛想がないが面倒見はいいし、体力も十分にある。荷物持ちにはもってこいだ。

――無理せずに、出来る範囲で頑張れよ」


そんなに気にかけてもらっていたなんて、予想外の出来事に驚き戸惑っている私に、


「真田弦一郎だ。宜しく頼む」

「あ、名字名前です。こちらこそ、宜しくお願いします」


高校一年生とは思えない程落ち着いた物腰の彼に、お辞儀と共に挨拶をした。



→next

- 5/15 -

[*前] | [次#]
しおりを挟む


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -