思いをはせる


夕食も終え、自分の部屋のソファーにもたれかかりながら、紅茶を飲む。

ホッと一息つきながら、今日の事を振り返ってみた。

とりあえず、試験問題の解答欄は全て埋めた。満点は無理だろうけど、合格しているだろう。


(彼はどうだったんだろう?)


消しゴムを忘れて焦っていた赤い髪の男の子を思い出した。

某事務所に入っていてもおかしくないくらい可愛い男の子だった。試験を受けていたから同い年なんだろうけど、あの慌てた様子のせいか幼く見えた。


「何かいい事でもございましたか?」


思わず笑ってしまったところを、篠山さんに見られてしまったようだ。


「ええ、久しぶりにお父様とお母様とお話出来たし・・・高校生活が待ち遠しいの」


こっちの両親が「お疲れさま」と忙しい仕事の合間に電話をしてくれたのだった。数分間だったけれど、その気持ちがとても嬉しかった。

その返事に納得したのか「そうですね」と篠山さんもにっこりと微笑んでくれる。(その微笑みにはヤバイです!!)

そんな中、静かな部屋に携帯のメロディが流れる。ディスプレイに表示された名前を見て、笑みが溢れる。


「もしもし、侑士君?」

『試験どうやった?大丈夫やった?』

「うん、全部埋めたし大丈夫だと思う」


こんな何気ないやり取りが何だかくすぐったく感じる。


「高校生活が楽しみ」


社会人になってから、過ぎ去った学生時代が輝いて見えた。あの頃に戻れたらと、思ったこともある。

今度の学生生活は悔いがないよう精一杯楽しもう。



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