私は今、例の豪華な車に乗ってある学校に向かっている。 今日は私が受験する、立海大附属高等学校の受験日なのだ。 あっちでは大学も出てるし、こっちでも侑士君や家庭教師にみっちりと勉強を教えてもらった。 不安ではあるが、落ちたりはしないと思う。 「名前様なら大丈夫ですよ」 と、篠山さんに見送られ、私は校舎内へと入って行った。 受験番号の書かれた席に着いて、受験票やシャーペン等を用意していると、隣から焦った声が聞こえてきた。 「っ!!やっべー、消しゴムが・・・」 その男の子は冷や汗をかきながら、鞄や筆箱をひっくり返していた。そうしている間にも、受験開始時刻が迫ってくる。 「ねぇ、よかったらコレ使って」 「・・・えっ?」 私がそう言って消しゴムをその彼に差し出した。 「私、消しゴム2つ持ってるから1つあげるよ」 そう言ってみたが、彼はポカンと無言で私を見つめたままだった。そうしている間に、受験監督の先生がこの教師に入ってきた。 相変わらず無言の彼の手に消しゴムを渡して、彼の手ごとギュッと握り締めた。 「・・・サ、サンキュ」 と、真っ赤な顔でうつ向いている彼に、 「一緒に頑張ろうね」 と笑顔で返したのだった。 →next |