「あの、名字さんは佐助君と付き合ってるの?」 「いいえ、付き合ってません」 2日前の放課後、私を呼び出して不安そうに尋ねてきた女の子に、私はキッパリとそう答えた。 どうして私と猿飛君が付き合っていると思うんだろう?どう見たって、(玩具として)遊ばれているようにしか見えないのに。 その後、彼女は私の返事に嬉しそうに笑った後、猿飛君に手紙を渡してほしいと頼んできた。 「渡すだけでいいなら・・・」 と、私は了承したのだった。 次の日、私は彼女と約束通りに猿飛君に手紙を渡した。それから、私は今までの日常が嘘みたいに、平穏な日常を送っている。 そう、猿飛君からのセクハラがなくなったのだっ! ◇◆◇ 「で、私に一体どうしろと?」 「アイツをどうにかしろ!」 現在、私は伊達君、前田君、長曽我部君に囲まれている。アイツというのは猿飛君の事で、ズーンと暗くなっている猿飛君の横で真田君がオロオロしていた。 「・・・あれは落ち込むだろ」 「何で?」 「は?何でって・・・お前」 首を捻る私に3人は呆れている。けれど、分からないものは分からないんだ。 「佐助は名字に恋してるんだ」 「あり得ない」 「何でそう言い切れるんだ?」 「だって・・・」 私だって色々と考えてみた。どうして私なんかに毎日構ってくるんだろうと・・・。以前、猿飛君を見かけた時はいつも可愛くて綺麗な女の人に囲まれていた。それに引き換え、私はいたって普通。 そして分かったのだ。猿飛君が私に構う理由が! 「その理由って?」 「かすがちゃんだよっ!」 「「「はぁっ?」」」 猿飛君が私にちょっかいを出す ↓ かすがちゃんが助けに来る ↓ かすがちゃんが猿飛君を叱る。 そう、猿飛君はかすがちゃんに構ってほしくて私にちょっかいを出すのだ! 「「「ハァ〜・・・」」」 「え?違うの?」 「No!誰が見たって猿がお前にloveなのは分かるだろうがっ!!」 「でも、猿飛君はそんな事一言も言ってないでしょ?」 「「「え?」」」 「そうなの?」って顔で見られても、本当なのだから仕方ない。セクハラはされても、それらしい言葉を言われた事は一度もない。 「Ah〜、それは・・・」 「猿飛が悪いな」 3人はそう呟いた後、今度は呆れ顔で猿飛君を見ていた。 「え?俺様言った事なかったっけ?」 どうやら猿飛君は私達の会話を盗み聞きしていたらしく、慌てながら私達の所にやってきた。 「違うからっ!俺様が好きなのはかすがじゃなくて、名前ちゃんだから!!」 私をギューッと抱きしめながら、猿飛君はそう叫んだ。 「く、苦し・・・」 「本当だからね!嘘じゃないから!」 力任せに抱きしめられて、苦しさのあまりバタバタと暴れる私。猿飛君はそんな私に全く気付かず、大声で私への告白を叫び続ける。 「俺様てっきり名前ちゃんに嫌われたのかと・・・」 嫌いじゃないけと、だからといって好きというワケでもないんですが・・・。 そう言いたくても、私の口は猿飛君の胸板に塞がれてしゃべれない。 「いやぁ、よかったよかった」 「猿がquietだとweirdness(気味が悪い)だからな・・・」 「一件落着でごさるな」 「ハハ〜、ありがとねぇ」 ちょっと待って。 このほのぼのとした雰囲気は何?そして、そんな微笑ましいモノを見る様な目で、私達を見ないで下さい。(真田君、拍手なんてしないで!) 大人しいと なんだか寂しいです (……気のせいでした!) この日から、私の日常が更に悪化したのはいうまでもない。 「大丈夫。これからゆ〜っくりと俺様がどんなに名前ちゃんの事を愛しているか、教えてあげるからね」 →end |