新学期が始まって早一週間。


「おはよう」


教室に入ってそう挨拶すれば「名字、はよー」「おっはよー」等といくつも返事が返ってくる。

私のクラスは他のクラスよりも仲がいいと思う。いくつかのグループは出来ているものの、そのグループ同士で揉めたりはしていない。

その理由は、私の隣の席の彼――ジャッカル君のおかげなんじゃないかと、私は思っていたりする。

ジャッカル君はちょっとした事にでも直ぐに気がつくし、誰かが困っていたら手を差し伸べられずにはいられなし、自ら進んで貧乏クジを引いちゃうくらいいい人だということを、このクラスの全員が知っている。

それなら、ジャッカル君はただの『いい人』で終わっちゃいそうなんだけど、私を含め皆は日頃どんなに苦労しているか知ってるから、これ以上苦労を掛けたらジャッカル君が本当にハゲてしまうんじゃないか!?と気遣った結果、仲良しクラスになったのだった。

ジャッカル君の苦労の原因というのは、立海で最も有名なテニス部での彼の扱いというか立ち居ちというか…。

一年生の時から私とジャッカル君は同じクラスで、いつの間にかジャッカル君の愚痴を聞くのが私の日課になっていたりする。

愚痴っていっても、ジャッカル君の愚痴は聞いていても全然嫌な気分にはならない。

だって、言葉の端々から相手を本当に思いやっているのが伝わるし、最終的にはその相手を誉めてしまってるから。

初めは有名なテニス部のことを知りたくて、私とジャッカル君の会話を盗み聞きしていた女子も、話を聞いて思うところがあったのか、クラスで騒ぐこともなくなった。


「桑原君、今日はどんなことに巻き込まれてんのかなぁ」

「あんだけ個性的なのが集まってんのに、うまくまとまってんのはジャッカルがいるからに違いない!!」

「名字、今日もしっかりジャッカルの愚痴を聞いてやれよ。じゃないと本当にあいつ…」

「テニス部のファンは、練習の邪魔になんないように応援しろよ」

「当たり前でしょ!これ以上、ジャッカル君に苦労させらんないわよ」


要するに、私達はジャッカル君が大好きなんです。





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