新しいクラスが発表されている掲示板の真ん前で、食い入るように見つめている少女がいた。 彼女は既に自分の名前は探し出せているのだけれど、ある人物の名前をまだ探し出せないでいた。 目的の人物の名前は分かりやすいのだが、背の低い彼女は他の生徒の中に埋もれやすく、ごった返す生徒の中で自分の名前を探し出すのにもかなりの時間を要した。 「・・・あった」 彼の名前を見つけた瞬間、無意識に呟いてしまい、ハッと口元を手で覆った。 幸いなことに新しいクラスのことで盛り上がっていた為か、誰にも聞かれていないようだ。 彼女の顔は途端に真っ赤に染まり、キョロキョロと周りを見渡した後、足早に掲示板の前から去っていった。 彼女がにやけそうになるのを必死で我慢しながら新しいクラスへと向かって行くのを、先程の人物がじっと見つめていた。 「彼女に決めた」 3年I組、名字名前。 この瞬間から、この物語に否応なしに巻き込まれることになったしまった。 |