私は自分で言うのもなんだけど、人一倍人と争うことが苦手で、同じように嫌われるのも嫌だ。

だから、何時も自分が不快に思ったことでも我慢するし、相手に嫌われないように発言にもかなり気を使っている。


それなのに、今の私は敵意を持って、幸村君の前に立った。


あの、幸村君にだ…。


冷や汗が吹き出してくるし、僅かに体が震えているのが自分でもわかる。

こんな勇気というか度胸が自分にあったなんて…、とまるで他人事の様に思ってしまった。



私はゆっくりと視線を上げて、幸村君と目を合わせた。

さっき、ジャッカル君に向けられていた幸村君の鋭い視線が、私にも向けられることを覚悟しながら…。



「…何?どうかしたのかい?」


「「…………えっ?」」



けれど、そこにあったのは、私の予想とは全く違う、幸村君のきょとんとした不思議そうな表情だった。





――その台詞、そっくりそのまま幸村君にお返しします。





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