私達は普段、ジャッカル君を応援しにテニスコートに行ったりしない。なぜなら、黙って応援するということが出来ないからだ。男女関係なくジャッカル君に「頑張れ」等と叫んでしまう。それによって、外野が五月蝿いとレギュラーの機嫌が悪くなり、ジャッカル君が八つ当たりされてしまうということが多々あったからだ。 けれど、今回ばかりはそうは言っていられない。 クラスでの話し合いの結果、私を含む5人でテニス部の練習を見に行くことになった。 ◇ ◆ ◇ 「何これ…」 「……嘘だろ」 私達は目の前の光景に、唖然とするしかなかった。 立海はどの部活も全国レベルで、当然、練習も厳しい。その中でもテニス部は特に厳しいということは周知の事実であった。 それなのに、一生懸命練習に励んでいるのはジャッカル君、岡本君そして上田君だけ。 他の人達は気もそぞろで、どう見ても練習しているとは言い難い。まだ、準レギュラー以下は練習しているっぽく見えなくもないけれど、レギュラーはテニスラケットも持たず、本来マネージャーがするべき仕事をしたり、ベンチに座ってマネージャーと喋っていたり、汗一つかいてはいない。 テニス部のファンはそんなマネージャーとレギュラー達をお似合いだとかなんとか言いながら見とれている。 ふとジャッカル君達に視線を戻してみれば、ジャッカル君達はこの異様な光景を遠くから悲痛な表情で見つめているだけだった。 |