名字名前の存在を知ったんは、入学式の日やった。

玄関ホールに飾られた巨大な絵。彼女が入学の際に学校へと寄贈したモンやった。



少女A
についての考察 02



俺はその絵に魅入ってしまい、暫くの間、動かれへんかった。俺だけやなくて、他の奴等も足を止めてその絵を見ていた。

描かれた絵は眩しすぎて、なんや無性に泣きたくなったんを今でも鮮明に覚えとる。

俺が見ている世界は、こんな風に輝いてへん。

幸いな事に、予想より早く名字名前という人間を目にする事が出来た。

まぁ、それは当然や。

彼女は入学当初から有名やったし―なによりアノ跡部の幼なじみ―、俺と同じクラスやったから。

あの頃から名字の隣には、当たり前の様に跡部がおった。跡部のガードが固くて名字と話をする事はなかなか容易な事やなかった。

2人は付き合っている、俺だけやなくて皆がそう思っとったハズ。実際、跡部が名字に向ける視線は見とるこっちが恥ずかしくなるくらい、優しいモンやった。

しかし、ある日突然跡部がこのクラスに来なくなった。

別れたんか?

そう思ったけど、放課後に一緒に帰る2人の姿を見かけて単に喧嘩でもしてただけかと、結論付けた。

けれど、次第にその2人の姿に違和感を覚えた。跡部の様子がおかしい。部活中もイライラしとるし、名字を見つめる跡部の視線は辛そうで…、それに引き換え名字はいつも通り。

2人のそんな様子に俺は首を傾げるだけやった。詮索する趣味なんて持ち合わせてなかったしな。

その内、2人は一緒に帰る事もなくなり俺はチャンスとばかりに名字に話掛ける事に成功した。

今でも俺の心の中に焼き付いている、あの絵。その作者である名字の本性を、名字が見ている世界を知りたいと、あの日からずっと思っとった。

それがようやく叶いそうや。







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