胡散臭い女。

俺が名字名前という人を表すとすれば、その一言に尽きる。

女は煩いし、すぐに泣くし、意味なく集団で行動したがる。
名字先輩はそういう女ではなかったが、俺は女の中でも"名字名前"という女が1番嫌いだった。

あの笑顔を見る度に、そう実感した。

そして、まるで仮面の様な、嘘だらけの笑顔に騙されている奴等も嫌いだった。



少女A
についての考察 07




部活中たまにだが、ふと違和感を感じる事があった。

それはテニス部のレギュラー陣の誰かで(それは跡部さんだったり、忍足さんだったり…)、その視線の先には必ず名字先輩がいた。

けれど、名字先輩がテニスコートの方を見ているわけではなく、アトリエ代わりにしているという教室から僅かに見える名字先輩の姿を、誰かしらテニスコートから見つめている。


――意味有り気な視線で。


その視線に、どんな意味があるかなんて知りたいとも思わないが、いい気はしなかった。

正レギュラーであり、俺が下剋上すべき人達が、女一人に現を抜かしているという事実が、許せない。

しかも、その相手が俺が一番気に食わない―――名字先輩なら、尚更…。



部室に跡部さんがいなくなった後、必ずといっていいほど"名字先輩"の話題が上がる。

忍足さんはワザと名字先輩の事を"名前"と下の名前で呼び、鳳を挑発したり…、鳳も鳳で過敏に反応する。

そしてそれを、面白そうに見ている芥川さん。


「日吉はどー思ってんの?」

「………何の事ですか?」

「勿論、名前の事だC〜」


いつものやり取りの後、不意に芥川さんにそんな質問をされた。

そんな下らない質問に、俺はため息を1つ吐いた後、


「………嫌いです」


と、そう答えた。

俺のその答えに、鳳は俺を睨み付け、忍足さんや芥川さんは声を上げて笑い出した。


「何がそんなに可笑しいんですか?」

「ハハッ、そんなに怒らないでほしいC。ねぇ〜、忍足?」

「ハハ…ッ、スマン。日吉はそのまま"嫌い"でいてくれたら、それでえぇねん」

「そうそう。日吉は忍足と違って素直だC、大丈夫!」

「どういう意味やねん!!」


なんだか馬鹿にされたような気がして、いつも以上に俺の眉間に皺が寄っていった。







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