最初、俺は彼女の事を"跡部の幼なじみ"としてしか認識していなかった。

当時の俺は跡部が苦手で、「あんなヤツとよく仲良くなれるな」なんて思ってた。

それが、こんな風に思う様になるなんてな…。



少女A
についての考察 04



「景吾、宍戸君に謝りなさい」


その言葉に俺は面食らった。幼なじみとはいえ、アノ跡部に物怖じせずに説教するヤツなんていないと思っていたから。



中等部に入学し、テニス部に入って間もない頃だった。

俺や跡部はまだ平部員で、入学当初から俺様だった跡部が苦手な俺は、ある時あからさまに態度に出してしまった。

それ以来、何かと俺に絡んでくる様になり、顔を合わせてはお互いに悪態をついていた。


「フン、男のくせにチャラチャラと髪を伸ばしやがって」


その言葉が許せなくて、跡部に掴み掛かろうとした時だった。

名字がツカツカとコート内に入ってきたのは…。


「景吾、宍戸君に謝りなさい」


一瞬、驚きすぎてその言葉の意味が理解出来なかった。


「名前…」

「分かるよね?」


跡部は気まずそうな顔で名字の顔を見つめていた。

それに引きかえ、名字はまるで跡部を諭すかのような優しい目をして、跡部を見つめいた。


「…悪かった」

「あぁ…俺の方こそ悪かった」


あまりにもいつもと違う跡部の様子に、俺の怒りもいつの間にか収まっしまっていた。

名字はそんな俺達を見て、にっこりと笑う。すると跡部はホッとした表情を見せた。

やたら大人びて偉そうな跡部が、その時初めて年相応に思えた。

こいつって、俺が思ってたようなヤツじゃねぇのかも…。

この事がなかったら、跡部という人間の本質を見もしないで、今も嫌っていたかもしれない。

今では笑い話だけどな。

だからこそ、名字には感謝してる。そんな事は恥ずかしくて本人に言った事はねぇーけど…。

いつかちゃんと名字に伝えたいとは、思ってる。













「なぁ名字、跡部どこに行ったか知らねぇ?」


昼休みに榊監督に頼まれた書類を渡たす為、跡部の教室まで来てみたが、そこに跡部の姿はなかった。

その時、丁度名字を見かけたので尋ねてみると、


「ん?彼女と中庭にいるんじゃない?」


「ほら、あそこ」と名字が指差す方を見てみれば、確かにそこには跡部と女が中庭のベンチに座っていた。







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