「え〜、じゃあ起きないC〜」

「…困ったなぁ」


無理だと言われる度に傷付くのに、何でもない様に返事を返す。

名前は名前で困ってないくせに、困ったフリをする。

名前が名前で呼ぶのは跡部だけ。

特別じゃないけど、特別なのは跡部だけだから。

それが分かっているくせに、淡い期待を抱いて毎回同じ事を名前に頼む俺も跡部同様、バカだと思う。


「…じゃあ、膝枕してくれたら起きるc…」

「はい、どうぞ」


俺の隣に座って、膝をポンポンっと軽く叩く。

膝枕はいいのに、なんで名前で呼んでくれないの?

そんな言葉を飲み込んで、名前に頭を預けた。





そんな俺の頭を撫でる名前の手は、やっぱりとても優しくて、ちょっと泣きそうになった…。


「名前…」

「なぁに、"芥川君"?」




「………何でもないC…」


まるで俺の心に止めを刺すように、名前は俺を名字で呼ぶ。

それでも、名前はにっこりと笑っていて、その手は優しい…。

いっそのこと、止めを刺してくれたら…。

目を瞑りながら、そんな事を考えた。

けど、絶対に名前は止めを刺したりしない…。ギリギリまでは追い詰めるくせに…。

反対に俺が名前から逃げたとしても、絶対に追いかけてきたりしない。

傷付きもしない。

寂しいなんて思ったりもしない。

ただ今みたいに微笑んでいるだけ。



俺が本当に望んでる事は絶対にしてはくれない。




「名前ってスッゲー優しい


 けど、













 スッゲー冷たい…」






「今更でしょ?」




そう言って、クスクス笑う名前。

ホント、"今更"だよね…。

分かってんのに、涙が出るのは何でだろ?










◆芥川慈朗の見解◆
  スッゲー冷たい女
  (…悲しくなんか…ないC…)



 090808 加筆修正



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