なんというか


(い、居た堪れねぇ…)


私の人生において、こんなにも注目を集めたことは未だ嘗てなかった。冷や汗は垂れ流し状態だし、体は微妙に震え始めるし、胃がキリキリと痛むし、お腹の調子も悪くなりだした。


(なんか意識までも朦朧としてきた…、ま、まさか、これは魔王様の呪いかっ?!)


魔王様という言葉で、私をこんな状況に追いやった人物――幸村精市の顔が脳裏に浮かぶ。

目が覚めたら保健室で、あの忌まわしい出来事は夢に違いない!とホッと胸を撫で下ろした。意気揚々と自分の教室までスキップで戻ったまではよかった。

けれど教室のドアを開けた瞬間、夢じゃなかったのだと実感させられた。



だ、だってさ、めちゃくちゃ鋭い女子の視線が私を串刺しにしたんだからぁあぁぁっ!!



マジで怖かった…。ハンパなく怖かった!!死んだと思ったっ!!!なんか一瞬あの世が見えよ。お花畑が見えましたよー!

休み時間の度に、うちのクラスを覗きに来る人がいるし、その殆どが女子。「え〜、あの子がぁ?」とか「信じられない…」とか、私に鋭い視線を向けながら話してるんです。

私だって自分の悪口なんか聞きたくないですよ。でも、嫌でも耳に入ってくるっちゅーか、寧ろあんた達ワザと私に聞こえるように言ってるでしょ!と思わずツッコミを入れたくなる。怖いから言わないけど…。


「名前、大丈夫?顔色悪いよ」

「大丈夫くない。ヤバイ、マジでヤバイ。早退したい…」

「(大丈夫くないって…)ほ、保健室に行ってきたら。その顔色なら早退させてくれるんじゃない?」

「マジで?!もう早退させてくれるんなら、土下座でもなんでもするよぉー!!頼むから、帰らせてくれよぉー!!」

「ちょ、ちょっと、ギブ!ギブ!!…止めろって!」

「痛いっ!」


心配して声をかけてきてくれた友達の肩を掴み、ガクガクと力一杯揺さぶりながら懇願する私の頭に、拳が落ちる。


「ほら、こんなとこで寝てないで、早く保健室に行ってきなよ」

「うん、そうす

「そんなに元気なら、大丈夫なんじゃない?」

……」


私達の会話に、急に割って入ってきた声。止まっていた冷や汗が再び流れ始める。







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