「フフッ、君は見た目だけじゃなくて頭もかなり可哀想なんだね」


その言葉で、私の思考回路は再びストップしてしまった。

どんな女の子でも虜にしそうな笑顔から、耳を疑うような言葉が飛び出してくるとは思いもしなかったからだ。

えっ?もしかして…幻聴?


「―…イヒャヒ!!」

「この俺がわざわざ話し掛けているのに、無視するのはよくないんじゃないかな?」


数分前、学校の廊下ですれ違いざまに掴まれた手首にギリギリと音がしそうな程力を入れられた挙句、もう片方の手で頬をつねられた!

その痛みで現実へと強制送還。

現実に強制的に戻されたのはいいとして(いや、よくはないんだけども)、彼は一体私にどうしろと言うのだろうか?

勝手に夢に出てくるな、と無茶でも言うのだろうか?

そんな事を言われたとしても私だって好き好んで彼の夢に出ている訳じゃないし、私にどうこう出来る問題じゃない。


「まぁ、俺としても不満がない訳じゃないんだけど―…ていうか不満しかないんだけど、こればかりは仕方ないよね」


何が仕方ないんだっ!!


一人、うんうんと納得している彼にそうツッコミたいが、生憎頬をつねられたままなので断念。

いくら可哀想な頭の私でも、それを口にした途端、今以上に痛い目にあうってわかりますから!


「フフ、そういう訳で今日から仕方なく俺が君の旦那様になってあげる。よかったね、君のような(色々と可哀想な)子が俺と結婚出来るなんて。魔王…じゃなかった、神様に感謝するんだね」


言いたい事を言うだけ言って、彼は何事もなかったかのように私の横を通り過ぎて行った。

はぁあぁぁぁっ?!

今、何て仰いましたかぁっ?!

固まったまま混乱する私。そんな私に追い討ちをかけるかのように彼が放った一言。


「ところで君、何て名前?まぁ、べつにそんなのどうでもいっか」


そこで私の意識はブラックアウト。



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