「うわぁ、酷い顔。引くわ〜」

「「「…………」」」


色々なことを思い出し、半泣きになっている私の顔を指差して、ゲラゲラと笑う幸村君。

というか、THE・王子様って感じ の幸村君がゲラゲラ笑うなんて…私は幻でも見ているのだろか?

テニス部の皆様はそんな幸村君から一斉に視線を逸らし、「何も見ていない」と何度もブツブツと呟いている。きっと、私と同じ気持ちに違いない。


「…あの、いつから幸村部長と付き合ってるんすか?」


張りつめた空気の中、切原君がおずおずと私に尋ねてきた。


「…えっ?」


確かに『嫁だ』とか『彼氏になってあげる』だとか一方的に言われたけど、私と幸村君は付き合っていると言えるのか?

初めて会話したのは今日だし、もしここで「今日からです(ハート)」なんて言っちゃったりしたらそれこそ「あんな冗談本気にしたの?冗談は顔だけにしろよ」等々ととどめを刺されるんじゃ…。

思わずそれを想像してしまい、ブルッと体が震える。

それにひきかえ、切原君は私にどんな答えを期待しているのか知らないが、キラキラとした目で私を見つめてくる。

どう答えたらいいんだぁ!!と一人焦る私をよそに、幸村君が口を開いた。


「ん?付き合ってないよ」

「えっ、そうなんすか?」


その答えに一番驚いたのは私だ。

おいおい、その冗談のせいで私が今日どんな目にあったと思ってんだぁっ!!

今度は怒りでブルブルと体が震えてきた。






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