政宗様が部屋に籠る日々が続く一方で、家臣達により縁談が着々と進められていった。

政宗様は何も言わないし、俺も口にはしなかった。

だが、政宗様が部屋に籠っているという事は、その間名前に会っていないという事。

政宗様は奥州への思いと名前への思いとの間で葛藤して苦しんでいるというのに、二人が会っていないという事に安堵してしまう自分が情けなくて仕方なかった。

けれど、このままではいけない。

誰も幸せにはなれない。



「政宗様」

「Ah・・・小十郎か、どうした?」


すっと姿勢を正し、政宗様と向き合う。緊張のせいか膝の上に置いた手が、汗ばんでくる。

そんな俺を見て、政宗様が僅かに目を細めた。


ずっと考えていた事がある。


日に日に表情が曇っていく政宗様を、そして、それと重なる様に名前の悲しそうな顔が浮かび上がってきて、俺自身がこれ以上耐えられそうにない。


政宗様の為に、そして――名前の為に俺に出来る事がある。

俺は意を決して口を開いた。


「・・・名前を・・・」

「・・・っ、名前が・・・どうした?」





「名前を片倉家の養女にしようと思っております」




唖然とする政宗様をよそに、俺は続ける。


「正室には無理かもしれませんが、政宗様の側室にはなれるでしょう」

「小十郎・・・・・・」


目を見開く政宗様の視線を俺は真っ直ぐ受け止めた。

これでいい。

これでいいんだ。

この命、この俺の全ては政宗様の為にある。

ならば、名前への想いなど捨て去るべきだ。

俺の一方的な想いなど、政宗様と比べれば取るに足りないものなのだから。

この胸の痛みも時が癒してくれるはずだ。














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