数学担当の教師が休みで、急遽自主となった。 一応課題としてプリントが用意されているが、枚数が少ないという事もあり、大半の生徒が自由にしたい事をしている。 ふと隣の席にいる名字を見てみれば、既に課題は終わっているらしく、窓から見える外の景色を眺めているようだった。 「ねぇ、真田君」 「・・・どうかしたのか?」 俺の視線に気付いたのか、名字は俺の方に向き直って声をかけてきた。 「プリント以外の課題は出されてないよね?」 「あぁ、そのはずだが・・・」 俺の言葉を聞いた名字は少し考える素振りを見せた後、こう言った。 「こんなにいい天気なのに、教室に込もってるなんて勿体無いと思わない?」 ◇◆◇ (この俺が授業をサボる事になるとは・・・) 名字は課題を教卓に置いてあった箱に提出した後、一人で教室を出ていこうとした。 あまりにも名字が楽しそうで、俺は名字を止めるどころか、こうして一緒に教室から出てきてしまったのだ。 急に体調を崩す可能性がないとは言えない。 もしそうなったら・・・と考えると名字を一人には出来なかった。 「やっぱり外に出てきて正解だったなぁ」 あまり人目に付かない中庭の芝生の上に座り、名字は眩しそうに空を仰ぎ見ていた。 「ねぇ、真田君もそう思わない?」 「・・・あぁ、確かにそうだな」 天高く晴れ渡った大空。 木々の間から溢れる日差し。 教室の窓から見える景色と何一つ変わらないというのに、こうも違って見えるものなのか・・・。 真田も同じ様に空を仰ぎ見ながら、そんな事を思った。 →next [*前] | [次#] |