朝食兼昼食をとった後、新八と神楽は万事屋から出ていった。

それから、俺は一人て掃除やら洗濯をする。

名前がいなくなってから、家事全般は俺がするようになった。

家事をしながら、俺は毎日名前と過ごした日々を思い出す。

名前がいなくなって、もう3年程になるが全く俺の家事は上達しなかった。


―『バイバイ、銀ちゃん』


掃除機の音しかしないハズなのに、時折ノイズの様に名前の最後の言葉が混じって聞こえてくる。

いつも「いってらっしゃい」と仕事に行く俺達を見送っていた名前。

見送りの言葉がいつもと違う事に気付いたのは、名前が出ていってから随分後になってからだった。

けれど、仮に俺がその時に気付いたとしても、結果は変わらなかっただろう。

名前の姿が消えたからこそ、俺は変われたから…。


 ◇◆◇


マダオと一緒に行った居酒屋で偶然隣に座っていた名前。

そんな彼女を強引に口説き落とし、付き合うようになり、一緒に万事屋で暮らし始めるまでそう時間はかからなかった。

戸惑いながらも、いつだって名前は俺の我が侭を受け入れてくれた。

名前は家事全般をしてくれただけじゃなくて、自分の給料まで入れてくれた。

感謝していたはずなのに、いつしかそれが当たり前になってしまっていた。

俺達の身の回りの世話をしてくれていた名前を、重たく感じる様になってしまった。

そんな俺は、いつしか生活費として入れてくれていた名前の金で他の女と遊ぶようになっていった。

新八や神楽は俺を責める様になり、俺は万事屋に仕事が入った時以外は帰らなくなった。


「・・・そりゃ、愛想つかすわなぁ・・・」


まだ捨てられない名前の置いていった物。

俺もまだ名前への想いを諦め切れないでいた。




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