「今日も仕事、無いんだね・・・」 「いい加減、ちゃんとしたご飯が食べたいネ」 まだ寝起きで布団の中でボーッとしていた俺の耳に、新八と神楽の愚痴と重たい溜め息が聞こえてくる。 「・・・前はもっと楽しかったネ」 「神楽ちゃん・・・」 ある時期から、この万事屋の雰囲気は変わってしまった。 何をしていても、常に“物足りなさ”を感じてしまう。 新八も神楽も他の奴等も・・・、誰も口にはしないが思っているハズだ。 ――名前がいない。 今更ながら、誰よりも俺が名前の存在の大切さを実感している。 気だるい体を起こし、わざと音をたてて襖を開いた。 「・・・っ、おはようございます。銀さん」 「もう昼ネ、寝過ぎヨ」 「あ〜、はいはい・・・」 眠気覚ましのいちご牛乳を取り出そうと冷蔵庫を開けてみれば、 「あれ?銀さんのいちご牛乳は・・・」 「昨日のが最後だったんですよ」 「そんなモン買う金は何処にもねーヨ」 「マジでかぁあぁっ!」 空っぽの冷蔵庫。 部屋の隅に溜った埃。 しわが残ったままの服。 以前とは―名前がいた時にはあり得なかった違和感だらけの万事屋で、俺達は今日も“いつも通り”を演じ続ける。 →next [*前] | [次#] |