「「・・・で、どっちなんだっ!!」」

「・・・ぇ、うぇっ?!」


現実逃避していた名前に、突然掴みかかる様に詰め寄った。

当然、名前は訳が分からない。

ただ異様に2人の目が血走っていたのが怖くて、さっき以上に体を小さく寄せて震えている。

意味が分からないが、「どっちって何が?」等と尋ねる勇気など勿論名前には無い。


「・・・ど、どっちも・・・です」


顔を引き攣らせながら、無難であろう言葉を口にした。


「Ah〜?」

「へぇ〜・・・」


そんな答えでこの2人が納得するハズもなく、この部屋の温度が一気に下がってしまう。


(えぇ、私答えを間違えたんですかぁーっ?)


この雰囲気に、泣きそうな顔だった名前の瞳からボロボロと涙が溢れ始める。

まぁ、彼女にしてみれば今回はまだ我慢した方だったのだが、我慢も限界だったようだ。

「うぇっ、ううっ・・・」と泣き出した彼女に焦る2人の男。

政宗の頭には“筆頭がまた泣かせた”と冷ややかな視線で自分を見ている弟分達の姿が・・・。

佐助の頭には“何故泣かせるのだっ!”とプリプリと怒る幼なじみの姿が浮かび上がる。


「うわぁあぁっ・・・」


焦っている間に、更に名前の泣き声が大きくなっていく。

もう名前の顔は涙でグシャグシャだ。

その時、ふと佐助はある事を思い出した。


――『女の子って、

  傷心してる時に優しくされると

  コロッといっちゃうよね』


いつだったか、自分に付き纏っていた女がそんな事を言っていたなぁと・・・。




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