お、落ち着けよぃ、俺!

あの時みたいな失態はこれ以上、許されねぇぞっ!!

そう思った所で、情けない事に俺の手の平は汗でグッショリとしてる。


――〜♪〜♪〜♪


そんな時、帰り支度していた名字さんの携帯が鳴り出した。

携帯を開いただけだったから、どうやらメールらしい。

メールを読む名字さんを見て、嫌な事を思い出してしまった。

あの、あの真田が、真田だけが、名字さんのメルアドと携帯番号を知っているという事をっ!

同じクラスだし、担任から頼まれたって事もあるだろうけど、それを知った時どんなに俺がショックだったか・・・。

ううっ、今思い出してもへこむ・・・。

いや、待てよ。

今、聞いたらいいんじゃね?

こう、さりげなく携帯の話題を出して、最終的に名字さんに「メルアド教えて?」って言えばいいんじゃね?

いや、でも“もし”断られたら・・・。

え、俺って真田以外の存在って事?

まさかそんなワケがねぇだろぃ!

そうだ、いけっ!丸井ブン太!!

俺だって男だっ!!

今度こそ、格好よく決めてみせるぜぃっ!


(まずは、「名字さんの携帯ってどこの機種?」くらいからで・・・最後には・・・)


「メルアドと携番教えてっ・・・くら・・・ひゃ・・・・・」


アレ?

俺、今、口に出して言っちゃった・・・?

キョトンとした表情で俺を見ている名字さん。

あぁ、そんな表情も可愛いぜぃ・・・じゃなくってっ!!!!


「うぇぁっ!?」


無意識に言ってしまった上に、またしても噛んでしまった。

その上、驚いて変な叫び声まで出してしまうなんて・・・。

恥ずかしさと情けなさで、頭の中はパニック状態。


「いいよ。喜んで」


クスクスと笑いながらも、名字さんはそう言って携帯を差し出した。


「よ、宜しくお願いしま・・・す?」


急いで携帯を取り出そうと、ズボンのポケットを探るが一向に携帯が出てこない。

そこでようやく、さっきの教室に自分の携帯を置いたまま出てきた事を思い出した。


「うわっ、ゴメン!俺、携帯・・・教室に・・・」


自分でも何を言ってるのか分からないくらい、俺は混乱していた。

そんな俺に渡されたメモ。

そこには綺麗な字で書かれたメルアドと携帯番号があった。


「丸井君からのメール、待ってるね」


俺は嬉しさのあまり、その後帰っていった名字さんに“また明日”と挨拶する事も忘れ、ただ立ち尽くしていた。

・・・あまりの遅さに、ジャッカルが探しにくるまで。







(うわぁ、俺今幸せすぎて死ねる)(おいブン太、大丈夫か?)(いや、メールを送るまでは死ねねぇっ!)(はぁ?!)(なぁ、何て送ったらいいと思う?こう好感度がググーッと上がるメールってよ・・・)(いい加減にしてくれっ!)

→end&後書き

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