空が茜色に染まる。そんな時間帯になって、ようやく私は目が覚めた。

しかし、まだ体はダルい。

まだ寝ていたいが、そろそろ今夜の任務の最終打ち合わせがあるので、そうも言ってられない。

腰の鈍い痛みに耐えながらも、なんとか起き上がってシャワーを浴びる。

その時に、嫌でもボスが付けた紅い印が目に入った。


ボスはどんなつもりで印を付けたのだろうか?


その印を指で撫でながらそんな事をふと思ったが、馬鹿らしくなって考えるのを止めた。


 ◇◆◇


「う"ぉぉい、大丈夫かぁ?顔色悪いぞぉ」


打ち合わせが終わった後、スクアーロ様にそう声をかけられた。


「・・・ボス、何とか・・・・なりませんよね・・・」

「・・・・まぁな」


スクアーロ様は私とボスの関係を知っている。

というのも、最近ボスはスクアーロ様を通して私を部屋に呼び出すからだ。

私の様な平隊員がボスの部屋に入るなんて事はめったにない。

屋敷内で顔を合わすのも稀だ。

そこでボスは報告に来るスクアーロ様を使うようになったのだ。

スクアーロ様にしたらいい迷惑だし、プライバシーもなにもあったもんじゃない。


「・・・この任務が終わったら部屋に来い、だとよ」

「・・・今日もですか」


私よりも娼婦の方を呼んだ方がいいと思う。

なんて事はボスに言えない。

言った瞬間、かっ消される。


「まぁ、名前のおかげで死体の数は減ったけどなぁ」

「私には何の得にもなりませんよ」


ザンザス様に愛を求めた身の程知らずな娼婦が殺されるなんて事がよくあった。

まぁ、客に溺れて殺されるなんて自業自得だ。

何の為の娼婦か、殺された彼女達はそれを分かっていなかった。

ただ、それだけの事。


「名前、お前は・・・」

「殺されませんよ。その理由もありませんし・・・」


別の意味で殺されそうだけど・・・という言葉は留めておいた。

ザンザス様は男としてとても魅力的な人だとは思う。

けれど、私にしたら男としてよりもマフィアのボス――つまり、慕情よりも敬愛の気持ちの方が大きい。

ザンザス様に女としてではなく、部下の一人として必要とされたいのだ。


「開始時間まで、部屋でゆっくりしとけぇ」




仮初め恋情




「私よりもボスにとってもっと都合のいい女、どっかにいませんかね?」

「?!、・・・お前」


スクアーロ様はガックリと肩を下ろし、溜め息を吐いた。



→next

- 2 -

[*前] | [次#]

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -