更衣室で着替えを終えた私は、いつもの様に部室へと向かう。

そんな私の視界に入ったのはまだ着替えもせずにテニスコート脇のベンチに座る3人の姿だった。


「・・・何やってんの」

「仁王の顔からして、名前の話でもしてるんじゃないの?」


ボソッと呟いた私の言葉に後ろから返事が返ってくる。

驚きながらも振り返れば、既に着替え終えた幸村がニッコリと微笑みながら立っていた。

気配を消さないでほしい・・・。

本人にそう言ったところでどうにかなるワケもなく、視線だけで訴えてみたが、案の定それはそれは素晴らしい笑顔が返ってきただけだった。


「名前っ!」

「あっ!!女誑しは名前先輩に近づかないで下さいよっ!」

「そうだぜぃ、女誑しが彼氏なんて名前が可哀想だろぃ」

「俺は女誑しなんかじゃなかっ!!」


私を見つけた雅治がキラキラとした目をしながら私へと駆け寄ろうとしたが、雅治の前にブン太と赤也が立ち塞がる。

ギャーギャーと喚く3人を後目に、私は頭を傾げた。

“女誑し”

無自覚にせよ、そんなのは今さらだと思うのは私だけなのだろうか・・・。


「「仁王(先輩)の初カノの話だろぃ/ッス!!」」

「名前に何ちゅう事言うんじゃあぁぁっ!!」


あぁ、その話か・・・。と私が頷いたのと反対に私の横で今度は幸村が頭を傾げた。


「・・・でも、それがなかったら雅治と付き合ってなかったらよねぇ」


私の言葉が聞こえたらしく、ブン太と赤也がどういう事だよぃ/ッスか?と私に詰め寄ってきた。






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