すでに練習メニューを終えていたせいか、今だにベンチにいる3人に注意する者は誰もいなかった。

デレデレとした表情の仁王に逃げたに違いないっ!

その証拠に、コートにいるのは自分達3人だけ…。

どこか遠い目をしたブン太と赤也は、終わりの見えない仁王の話にまだ付き合わされていた。


「…実はのぅ、俺が初めて付き合った女は名前じゃなかったんじゃ」

「「ええっ?!」」


仁王の放った一言で、2人の瞳に再び光りが宿ったのだった。


 ◇◆◇


高学年になり可愛い男の子だった雅治少年も、次第に今の片鱗を見せ始め女子から“カッコイイ”と言われる様にもなった。

そして自分がモテるという事を自覚したのもこの頃だった。

しかし、雅治少年とってそんな事はどうでもよかった。

相変わらず雅治少年は人見知りで、友達といえるのは名前ぐらい。

2人で手を繋いでの登下校も続いていたのだが、異性を意識し始めた同級生から冷やかされる様になってしまった。

そんなある日、事件が起こった。


「この子、仁王君の事が好きなんだって。付き合ってあげてよ!」


放課後、帰ろうとした所を数人の女子に呼び止められ、裏庭まで連れてこられた。

クラスメートだとは分かるが、名前すら覚えていない女子に告白されても、何とも思わない。

しかし、真っ赤な顔でうつ向いている女子の横で、他の女子がまくし立てる様に口を開き始めたのだった。


「仁王君は好きな人がいるの?」

「・・・別におらんけど」

「ならいいじゃん!この子可愛いでしょ?」

「この子結構モテるんだよ」


だからなんなんじゃ・・・。

そう思ったが、それは心の中に留めておく。

そんな事よりも、俺を待っているであろう名前の事が気になって仕方がなかった。


「帰りたいんじゃけど・・・」

「ちゃんと返事してからじゃないと、帰さないから」

「そうよ!返事しないなんて可哀想じゃない」






「ハァ〜、付き合ったらえぇんじゃろ・・・」


少しでも早く帰りたくて、俺はそう言ってしまった。




KISS kiss xxx:07




(…小学生の頃から女誑しだったのかよぃ)(最低っすよ、仁王先輩)(なんでそんな話になるんじゃ!あぁ言わんかったら、いつまでたっても帰してもらえんじゃろうがっ!!)(だからってよ…)(可哀想っすよ)


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