「じゃあ、その時に名前先輩に人目惚れしたんすか?」

「ん〜、今思えばそうなんじゃが・・・自覚したのは随分後だったのぅ」

「その話をしろよぃ!(んで、とっとと俺を解放してくれ・・・)」


せっかくの休日だというのに、これ以上仁王に時間を潰される訳にもいかないとブン太は心の中で大きな溜め息を吐いた。

ふと赤也と視線を合わせれば、お互いに同じ事を思っているのが見て取れた。

そんな2人に大好きな名前との思い出に思いをはせている仁王が気付かなかったのは、不幸中の幸いといった所だ。


 ◇◆◇


「まぁ〜君、学校行こ」


転校してからというもの、毎朝名前は仁王を迎えに行っていた。

しかし、雅治少年は未だ名前に慣れなかった。

勝手に仁王の事を“まー君”と呼び、何かと気に掛けてくれている事は子供ながら分かっていたが、どう対応すればいいのかが雅治少年には分からなかったのだ。

“おはよう”と挨拶されても返事をする事も出来なくて、名前の話に相槌を打つ事もなく、ただうつ向きながら黙っていただけだった。

それでも・・・、毎朝手を繋ぎなら登校するこの時間が雅治少年にとって、恥ずかしくもあり嬉しくもあった。

知らず知らずのうちに、特別な時間になっていたのだった。

そうして2人が出会って1ヶ月程経った頃、雅治少年は名前の事を“名前チャン”と呼び笑顔を見せるようになった。

差し出された手を、しっかりと握り返せるようにもなった。




KISS kiss xxx:06




(そん時に自覚したって事っすか?)(・・・まだまだ後なり)(オイッ、前振りが長いんだよぃ!)(なんじゃ、オレと名前の思い出にケチを付けるんか?!)((・・・一体、何時になったらこの話は終わるんだろう?))


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