「仁王先輩は、いつから名前先輩の事が好きだったんすか?」

「その話は俺も聞いた事がなかったぜぃ」

「ん〜?そうじゃのぅ・・・」


休日の部活という事もあり、いつもよりはのんびりとした雰囲気の中、不意に赤也はベンチで休んでいた仁王に尋ねた。

仁王の視線は常に立海テニス部のマネージャーであり、彼女である名前の姿を追っている。


「そんなに聞きたいのなら、話しちゃる」


その途端、仁王の顔がヘラッと崩れる。

その顔から、ブン太と赤也は話が長くなりそうな予感がしたが、今更“話さなくていい”とは言えず、大人しく仁王の話に耳を傾ける事にした。

そうしなければ、詐欺師からの嫌がらせがネチネチと続く。

今まで2人はそれを嫌というほど経験してきたのである。


 ◇◆◇


仁王雅治は幼い頃、非常に人見知りが激しく、大人しい子供だった。

ヘタレだったとも言える。

引越しが多かったせいか子供の頃から今の口調で、新しい学校に転校する度に、クラスメートにからかわれていた。

それもあって、親しい友人という者もおらず、遊び相手といえば姉ぐらいだった。

そんな雅治少年が小学校3年生に上がる春。


「はじめまして、名前です」


姉の後ろに隠れて伺う様に見ていた雅治少年に、ニッコリと笑顔で手を差し出してきたのが、お隣に住んでいた名前だった。


「・・・・・っ」


そんな事をされたのは初めてで、恥ずかしさと嬉しさで雅治少年はビクッと体を震わせた後、逃げるようにまた姉の後ろに隠れてしまった。


 ◇◆◇


「―・・・それが、名前と初めて会った時じゃ」


差し出された手を握り返す事が出来なかった。

それが今でも心残りだったりする。




KISS kiss xxx:05




((絶対、嘘だっ!))(失礼じゃなっ!)(昔の面影がなさすぎだろぃ!)(そうッスよっ!!)(今も昔も雅治少年は可愛いじゃろうが・・・)(うわぁ、どこがだよ・・・)(プリッ)


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