「お疲れさま」


そう言って、私はたった今試合を終えた雅治とヒロにタオルとドリンクを渡した。

試合は私達立海が圧勝した。

雅治は「誉めて、誉めて」と言わんばかりにニコニコと満面の笑顔で私を見つめている。

仕方なく私は雅治の頭をワシャワシャとタオルで拭いてあげると、「名前ー!!」と私の名前を叫びながらいつものようにギューッと抱き締めてきた。


「まーくん、名前の為に頑張った」

「うん、頑張ったね。恰好良かったよ」

「・・・っ?!名前ー!」


私がそんな事を言うとは思っていなかったらしく、雅治は1度抱き締めていた手を私の両肩に置いて、顔を覗き込んできた。

いつになく雅治の目が大きく見開いている。そんな雅治がなんだか可愛く思えてしまう。

そう思ったのも束の間、再びテニスコートに響き渡る雅治の叫び声と息苦しくなるくらいの抱擁。

そして耳に入ってくる「なんであんなヤツにーっ!」「・・・アレは反則だぁ!!」「悪夢だ・・・」等の氷帝ベンチからの(悲痛な)声。


(ご愁傷様です)


おそらく、雅治以外の立海メンバーはそう思っているハズだ。

今回のダブルスの試合は、相手が宍戸・鳳ペアにも関わらず圧勝した。

勿論、それにはそれなりの理由がある。

雅治だ。

雅治のキャラの壊れっぷりに、宍戸・鳳ペアが戦意喪失したから。

今回は雅治の我が侭により選手以外はコートにいない。

つまり、いつもは(ある程度)雅治のストッパーになっている見学者がいない。

したがって、雅治は試合中だろうとベンチで待機中だろうと私への溺愛っぷりを如何なく発揮したのだ。

マネージャーとして働く私の背後に常に付きまとい、隙があれば抱きついてきたり、あまつさえそれ以上の事をしようとしたり・・・。

試合中はボールを打つ度、決まる度にキラキラとした瞳で私を見つめてくるのだ。

そんな雅治の姿に氷帝メンバーがドン引きだったのは言うまでもない。



KISS kiss xxx:03



「・・・もうお前等と試合しねぇ」


帰り際に跡部君が青い顔をしながら、そう言い残して帰って行った。(跡部君の背後には同じく青い顔をしている他のメンバーが、力一杯首を縦に振っていた)

そして、その日以降、立海テニス部に練習試合を申し込む学校は極端に少なくなった。



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